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マインドフルネスファーミング
CONTENTS
●[知識] マインドフルネスファーミングとは
●[知識] 感謝が循環する農の哲学
●[知識] 農におけるマインドフルネス
●[実践] 基本姿勢
●[実践] 五感を研ぎ済ませる
●[実践] 作物の気持ちに耳を傾ける
●[実践] 農作業後のととのい時間
●[実践] 至福の時間、食事瞑想
マインドフルネスファーミングとは
マインドフルネスファーミングとは、農作業などで土や農作物や気候などと触れ合う際に、今この瞬間に全集中して、目の前の物や状況をありのまま、やんわりと受け取ることを意味する造語です。
こういったメンタルの状態で農作業などを行うことで、農作物やその周辺の環境と優しく向き合えるようになり、意欲的かつ穏やかに作業を行うことができるようになり、結果として自分の心身をととのえるばかりでなく、農作物の成長や収穫にも大きな影響を与えることができる、小さな規模のSDG'sといえる取り組みです。
作業をしながら心身がととのい、作業効率もアップするという、他の分野にも大いに応用できるこの好循環を、最も分かりやすい農のフィールドで行うマインドフルネスファーミングですが、作業直後に水シャワーを浴び、ととのいイスなどでごろ寝すれば、サウナと同等のととのいを得ることができる、一石三鳥のこの新発想を、このページで詳しく解説していきたいと思います。
感謝が循環する農の哲学
循環なくして持続なし。
この考え方は、生産/消費/廃棄を繰り返してきた人類の歴史に対して、国連がSDG'sという大きな警笛を鳴らした、その核となるコンセプトです。
自分(たち)が様々な果実(←比喩)を頂くことをゴールとして生産を繰り返すのではなく、そこで得た恩恵を自分(たち)以外の様々なものへと還元し、その気持ちや行動が結果としてまた自分に返ってくるという、モノやキモチが循環する構造を作ることこそが、これからの世で人類が生き残る道筋ですよ!というコンセプトです。
そして、それを最も身近に実感できるのが「農」の世界だと言えます。
目の前の農作物を商品として捉えるのではなく、命として捉えることで、(自分のためではなく) その命を大切に育てようとする気持ちが芽生え、その命の言い分に耳を傾けることが上手になり、愛情深く手入れすることが可能になります。
そのことで結果的に作物は豊かに育ち、その命を戴くことによって感謝が生まれ、その感謝がまた、次の命を丁寧に感じる力となり、その気持ちと結果が循環していく実感を得ることができる。
そのカギとなるのがマインドフルネスの感覚なのです。
農におけるマインドフルネス
[マインドフルネスのページ] で詳しく触れていますが、マインドフルネスとは、今この瞬間 目の前で起きていることを、ありのまま感じている心の状態のことです。
私たちの心は、自分が思っている以上に未来や過去へと向かい、それらを批判して勝手に疲弊してしまっているということは、[ととのいの脳科学] でも紹介されています。
この脳科学の裏を返すと、私たちの心がもし、今この瞬間に全集中し、批判せずに目の前の物事を感じることができれば、もっと快適に、そしてもっと意欲的に物事に取り組むことができるようになるということなのです。
ですから、マインドフルネスの状態で農作業を行えば、土から顔を出した新芽に愛着が湧いたり、ぷっくりと実っている果実を愛おしく感じたり、戴いた作物が涙が出るくらい美味しかったりするわけなのです。
再び裏を返せば、農作業というのは、そういった愛情や感謝の気持ちを当たり前に引き出してくれる、つまりマインドフルネスでいることがたやすいフィールドだということができます。
基本姿勢
一般的なマインドフルネス同様、マインドフルネスにとって大事なのは、身体の在り方(姿勢)、呼吸、そして心の在り方(姿勢)です。
これはマインドフルネスファーミングにおいても同様で、どういう身体姿勢でいるか、どういう呼吸でいるかが、どういう心の姿勢でいるかに直結してきます。
よりマインドフルネスな姿勢であれば疲れにくく、充実感に満ち、非マインドフルネスな姿勢だとエゴイスティックにやりやすく、このため疲弊しやすくなります。
●身体姿勢の基本
様々な姿勢を強いられる農作業では、背骨の伸ばし方ではなく、丹田と呼ばれる下腹の奥の在り方が最も大切になります。
骨盤底を軽く締め上げ、大笑いしている時の下腹の感覚を作り、そこから全身へと力を流していくよう心がけます。
●呼吸の基本
農作業中は、どうしても息を詰めて上半身の力を使いがちですが、思い出したタイミングでいいので、土や作物の香りを味わうような、やわらかい呼吸を取り戻すよう心がけましょう。
●心の姿勢の基本
マインドフルネスの基本は、目の前のものを丁寧に感じることです。
ついつい作業を完了させることに意識が向かいがちですが、そのためにこそ目の前の作業に専念し、何かを為すのではなく、自分の手の動きを含めて「純粋に感じること」に専念していきましょう。
マインドフルネスができていると、喉の渇きや疲れ具合など、自分の内側の状態に対しても繊細になりますが、変な集中をしてしまうと、それらに気づきにくくなることもあるので、自分の体調にはくれぐれも注意しましょう。
五感を研ぎ済ませる
上の項目でも触れましたが、マインドフルネスで最も大切になってくるのは、今この瞬間を丁寧に感じること、つまり五感を研ぎ済ませることです。
農作業に限らず、あらゆる作業は、結果に囚われ過ぎて今を楽しむことができなかったり、自分の思い通りに事を為そうとして力み過ぎたりすることで疲れやすくなります。
逆に言えば、結果に囚われ過ぎず、今この瞬間、目の前のこに専念し、それを味わうことができれば、どんな単純作業でもそれが楽しくなり、疲れにくく、結果として非常に効率よく作業を行うことができるようになります
土に触れる感触や足裏に感じる土の凹凸、葉っぱ一枚一枚の濃淡やその美しさ、場所によってまるで違ってくる香り、新鮮な空気、照り付ける太陽の陽射しなど、普段は先入観で好きと嫌いに分断しているこの世界を、一度まっさらな気持ちで感じてみることで、とても味わい深く、心地よく、感じることができるようになります。
作物の気持ちに耳を傾ける
五感を研ぎ済ませて農作業を行っていると、農作物に対する愛着が自然に生まれ、それらを大切に感じることがたやすくなってきます。
そこで大切になるのが、作物の気持ちに耳を傾けることです。
その作物は今、どうして欲しいと感じているのかな?
と、気づかう気持ちを持つことです。
人でさえ勘違いやおせっかいがあるように、必ずしも感じた通りのことをしてあげることが、その作物にとっていいことであるとは限りません。
でも、それでもそういう気持ちでいることが、目の前の作物を商品でも作物でもなく、命として捉え、尊重し、感謝することへ繋がっていく大きなきっかけになることは間違いありません。
今、何を欲しているのかな?
自分に対して、そして目の前の相手に対して、ぜひこの問いかけをしてあげる習慣を持ってみてくださいね。
農作業後のととのい時間
農作業は、大きな目的意識を持って行うことや、自然の中で作業するということから、丹田が自然にととのい、身体がととのいやすくなります。
また、夏の作業となると全身が火照り、ひと風呂浴びたような状態で作業を終えることになります。
そんな時に、ひと眠りしたり、ビールをぐびっと傾けたりするのも良いですが、冷たい水シャワーを頭からかぶって脳と全身を冷却し、一度心身にカツを入れてから15分程度ごろ寝をすることで、[ととのうってどんな状態?] で触れているような、サウナ的なととのいを得ることが可能になります。
さらに欲を言えば、ごろ寝から起きてさらに15分ほど、イスや床に背筋を伸ばしたままボケっとしていると、何もしなくても禅や瞑想の境地に至り、心身共に強烈にリセットされていきます。
農作業後の極上のととのい時間を、ぜひ一度体験してみてください。
至福の時間、食事瞑想
いくらプロセスが大事と言っても、やはり収穫後に農作物を頂く瞬間は、幸せに満ち溢れたものになります。
愛情をいっぱいに注ぎ込んで育てた、我が子のような農作物、命を感謝と共にいただく瞬間です。
できれば姿勢を整え、目を閉じて、その子たちが土から目を出した頃から成長のプロセスを思い出し、そして「いただきます」を伝えてみましょう。
できればまず目でよく見てあげ、香りを嗅いであげ、そっと口の中に入れたら、飲み込む前に何度も何度も噛みしめ、命をしっかりと感じます。
液状になるまで噛んだら、ゆっくりと飲み込み、胃に落ちていく様子を感じます。
その子たちの命で、自分の命を繋ぐことができている。
そんな感謝の気持ちや、命が繋がっていく感覚と共に、ゆっくりと食事瞑想を味わってみてくださいね。
文責/監修:綿本彰(わたもとあきら)
日本ヨーガ瞑想協会会長。一般社団法人ワークフルネス理事。
森ヨガ指導者トレーナー、ネイチャーマインドフルネス講師。
瞑想/睡眠系YouTuber。
世界各国でヨガ/瞑想/マインドフルネスを指導し、長きに渡り日本におけるヨガ/瞑想をリード。
様々な地域や施設に対応した瞑想プログラムの構築、瞑想的な観点からの施設コンサルティングなどを積極的に行っている。
50冊以上の著書は、累計100万部を超える。
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